薔薇の咲く庭を目指して

薔薇には一体どれほどの魅力があるのでしょうね。数ある植物の中でも薔薇は別格の存在のように思います。 かくいう私も、もともとは全く興味なかったはずなのにいつのまにやらすっかり夢中。なぜかしら?よくわかりません。不思議です。

 

「バラは難しい」という言葉をよく聞きます。私みたいな素人には敷居が高いワ、と思う人も多いでしょう。私もそうでした。でも、「ウチのバラは特に何も手入れしないけど毎年咲くんだ」という人もいます。そう、本来バラは丈夫な植物なんですよね。ただ、バラの魅力って、「手入れのしがいがある」ってことだと思うのです。私みたいな素人でもそれなりに一生懸命愛情を注げば必ずそれに答えてくれる、そんな可愛さがたまらないんですね。
1年に一度しか咲かない1季咲きのバラ、これをつまらないと思うかどうかはその人の価値観によると思うのですが、私は、苦労が一挙に報われる5月、この時の為に1年間せっせと世話をすることを苦とは思わなくなりました。これは、バラを育ててみてはじめて気づいたことです。

 

2003年5月  ピンク・ラ・セビリアーナ


私が最初に手に取った一株は、気高い大輪の花を咲かせるHTでも優しい花姿で人気のERでもなく、ラ・セビリアーナという名のランドスケープローズでした。
せっかくだからバラも一本くらい植えてみよう、という気まぐれな考えで、だからなるべく手がかからなくてたくさん咲くやつ、という選択でした。
 けれども、初めてこの土地の春の嵐を経験した時にはあまりのすごさに気持ちが萎えました。「こんなとこでバラなんて絶対無理!」

・・・まだ更地のお庭で風をさえぎるものがなかったため、バラの新芽がみんな寒風でボロボロになっちゃったんです。季節風だということに気づいてなくて、やがて穏やかな春がやってくることも想像できませんでした。毎年同じように同じ季節を過ごしているのに、関心の方向性が違うとその季節から感じ取るものすら違うんだなあということをつくづく思いました。
春本番の5月、あんなにひどい目に遭ったセビリアーナはちゃんと花を咲かせました。もうどうせダメだから、とずっと見ないふりをして目をそむけていたので、私には突然花が咲いたように思え、この思いがけない贈り物に感動しました。「薔薇が咲いた」という古い歌がありますが、もう、そのまんま!
この時の喜びと感動が、現在のバラへの情熱につながっているのだと思います。

 

 

2002年5月 初めて植えたバラに蕾がついた。
左から、ピンク・ラ・セビリアーナ、ニューカクテル、スーパースター

私のガーデニングは、「土を耕すこと」「花壇を作ること」から始まりました。何も知らなかったけれど、とにかくこんなカチカチの土に何を植えてもムダだろう、ということだけはわかったからです。
そして、第1号の花壇に第1号のバラを植えることにしました。
第1号の花壇・・・つまりそれは、一番深く土を掘り起こし、一番丁寧に土を作った花壇です。庭造りも慣れてくるに従って「ま、いっか」が多くなりましたので。
この花壇は最終的にバラ専用花壇になり、今はバラが6本植えられています。ですが、3年経った今でも土は老化せずフカフカのままです。もちろん肥料は足してますが、いつ掘り返しても他の花壇とは格段の差があるのです。ド素人のド丁寧さが効をそうしたのかな。

 

2003年5月 つるばら
 
私は、つるばらを仕立てるのが好きです。
最初は単純に庭が狭いので立体的に見せる工夫をしよう、と思ったところから始まりました。バラだけではなく、クレマチスやらハニーサックルやら、とにかくつる性の植物を上手に使おうと考えたのです。
これは考えがとても甘かった!つる植物は、光を求めて自由奔放にあきれるくらいどこまでも伸びていきます。それらを上手に誘引してやり、美しい景観を作ることのいかに難しいことか。少しほおっておくと、庭はすぐにジャングルのようになってしまいます。・・・ほとほと手を焼きました。
でも格闘しているうちに、これが楽しくなってくるから不思議。曲げたり伸ばしたり巻いたり、うまくやれば風景を作るのにこんなに適したものはないからです。特につるばらは、真冬に春を想像して絵を描くようなもので、花の季節思い通りにキャンバスが埋まったらこんな面白いことはないと思っています。

誇らしげにバラが咲き、庭中が甘い香りで満たされる季節を夢見て・・・私の1年は過ぎていきます。